環境大臣賞/環境フォト大賞
(大日精化工業賞[環境色彩]から)
- 審査員評価
- 人類の負の世界遺産としての原爆ドームで、毎年8月6日の夜に灯籠流しが行われます。実は私(注・中谷審査副委員長)も広島出身でこの灯籠流しの光景を何度となく撮影していますが、風向きや河口から元安川に流れる潮の加減などで、このようにしっかりした構成にまとめるのは非常に困難です。画面中ほどにあるろうそくのついた灯籠と、手前の火が消えた灯籠との色の対比が優れた効果を生み、後方に位置する原爆ドームもしっかりした存在感をもって写し出されていて、構図的にも技術的にも秀でた作品です。そして何よりも、作者である秋田さんご自身の、原爆の恐ろしさを伝えたいという思いが込められた一枚として、素晴らしい作品であると感じます。
夾竹桃が咲き乱れ、夕闇が迫る相生橋の下、灯籠流しを写すべく原爆ドームの対岸にカメラを構えると、ある瞬間からざわざわと灯籠が私の前に集まってきました。夢中でシャッターを押し続け、5分か10分ほど経ったでしょうか。急に灯籠は、私の前から流れ去っていきました。まるでこの川で亡くなった人たちが、何かを語りかけているようだ……。こんなことを思うのは、私が被爆者で原爆の放射線の恐ろしさを知っているからでしょうか。これから核はどうなるのか。現状を見るにつけ、そんな思いを強くしています。