『七緒vol.63』 文様のふ・し・ぎ 銀杏
私が暮らす東北地方は秋が短く、その分、紅葉の美しさは目を奪われるほど。緑から黄色、そして赤や茶色のグラデーション。自然が織りなす色はなんと鮮やかなのだろう。
町内にある歴史民俗資料館の入り口には銀杏の大木があり、町に秋の訪れを知らせるように、どの木よりも早く色づき始める。見頃はまだまだこれから、などと油断していると、あっという間に見逃してしまう。
澄んだ空気が清すが々すがしい真っ青の秋晴れの空に、黄色の葉が眩まぶしいくらいよく映える。生命力溢れる大きな銀杏の木の下に佇たたずみ、黄色い世界に身を置くと、なんとも言えない幸せな気持ちに
包まれる。
吉祥文様として用いられる「銀杏」。幹や枝の力強さ、散った葉が辺りを覆い尽くす様子さえ、この先を光で照らすかのように輝かしい。
文=長谷川ちえ エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。情報発信サービス「note」にて福島・三春町の行事や暮らしの様子を二十四節気に沿って執筆中。
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イラスト=山本祐布子