文様のふ・し・ぎ 24 市松 

『七緒vol.62』 文様のふ・し・ぎ 市松

市松文様 正方形を上下左右に敷き詰めた格子状の文様。そもそもは「石畳文様」と呼ばれており、その細かいものは、霰(あられ)文様と呼ばれ、平安時代には貴族の正装の地紋に使われていた格の高い柄でもある。現代においても地紋としての人気が高い。

 石畳の坂道を、息を切らしながら歩いていると、石よりもなぜか溝の方を見ている自分に気づく。あみだくじのように続くその線の先がどうも気になってしまうのだ。
 その昔、石を敷き詰めた様子を模した文様は、「石畳」と呼ばれ用いられた。江戸時代中期の頃には、歌舞伎役者・佐野川市松が衣装の袴(はかま)に取り入れたことによって「市松」と呼ばれるようになり、「市松文様」として広まった。シンプルな四角の形が規則性を持って、バランスを取るように繰り返されていく様子は、理屈抜きに気持ちがいい。私がなぞるようにして見ていた溝が続く先には、この気持ち良さへと続く何かがあるのかもしれない。
 英語ではチェッカーと呼ばれるこの調和が取れた文様は、時代や国、文化、思想も超え、万国共通に親しまれているといえるだろう。

文=長谷川ちえ   エッセイスト、器と生活道具の店「in-kyo」店主。二十四節気に合わせて福島県三春町を書きつづったエッセーが、「note」でスタート。https://note.com/hasegawa_chie お店の様子は、Instagramで。

イラスト=山本祐布子

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