文様のふ・し・ぎ 4 千鳥

千鳥

ひよこのようにぷっくりとした姿が愛らしい千鳥。
 ずいぶん前、京都へ旅行に出かけた際に、千鳥柄のハンカチや靴下、お菓子までもが土産物店に並んでいたのを思い出す。この文様が昔からあるものだと知ったのは最近のことで、キャラクターとまではいかないけれど、それに近いものだと当時は思っていた。
 昔から親しまれている千鳥は、ゆかたや手拭いなどに多く見かける。なかでも波や水と一緒に描かれた「波千鳥」は、波間を世間にたとえて「ともに荒波を乗り越える」という意味から夫婦円満、家内安全などの縁起のよい文様とされている。また「千鳥」と「千取り」の語呂合わせから勝運祈願、目標達成の意匠としても。
 のんきに見えて、実は人々の願いがギュッと詰まっていて、かわいらしいだけのキャラクターとはひと味もふた味も違うのだ。

文=中川ちえ
イラスト=山本祐布子

なかがわ・ちえ●エッセイスト、器と道具の店「in-kyo」店主。2015年7月には苧(そ)織り作家のますみえりこさんと、素描家のしゅんしゅんさんの二人展を開催。詳細はhttp://in-kyo.net/