いよいよ来年の1月から始まる大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。写楽、歌麿を世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった蔦重こと蔦屋重三郎の波乱万丈の物語ですが、主演を務める横浜流星さんが、蔦重の魅力や、役作りについて語ってくれました。
――――今回の主演のオファーを受けた時はどうでしたか?
横浜さん:もちろん目標の一つとしていた作品でしたが、それよりも、なぜというのは大きかったです。僕はNHKの作品に携わったことがないので、初出演、初主演でなぜ自分を選んでいただけたのか、今でも疑問に思ってます(笑)。でも選んでいただけたからには、責任と覚悟を持って、作品を届けたいです。
――――世間にあまり知られていない蔦屋重三郎ですが、彼の魅力はどこにあると思いますか?
横浜さん:蔦屋重三郎は、誰もが知る人物ではないですが、彼は多くの功績を残して、江戸を豊かにしています。江戸のメディア王とも言われていますが、今で言うと社長でありつつ、プロデュースも、営業も全て自分でやっている、多彩な人物。情に厚く、責任感があり、挑戦して失敗しても、へこたれないメンタルがすごいと思いますが、彼の一番の魅力は、自分ではなく、誰かのために動けるところ。僕も自分だけではなく、誰かのために頑張れるような人間でありたいと思っています。
――――舞台となる江戸時代についてはどう感じますか?
横浜さん:森下先生がつくる世界の中での、蔦重として見ると、江戸時代はいい時代だと思います。不自由ではあるけれども、みんな自分を持っていて、人々の交流を大切にしている。現代は、情報が錯綜しているので自分を持てずに流されてしまうような人が多いと思うのですが、江戸の彼らは流されず、強い意志を持っています。また、今の時代とそう遠く離れていないので、親近感を感じられるような世界観になっていると思います。
――――格差社会というところもありますよね。
横浜さん:格差社会は、どの時代もなくならないし、どうしたらなくなるのか、正直自分でも分からないのですが、そこで諦めるんじゃなくて、もがいて、動くこと、発信することが大事なのかなと思ってます。作品の中で不自由な部分や格差社会に“蔦重”が向かっていく姿には背中を押されています。
――――今回、小芝風花さん演じる遊女・花の井と蔦重との関わりにも注目ですが、蔦重の鈍感さに、もどかしさを感じますね。
横浜さん:やはり吉原には男女感の厳しい掟があるので、蔦重はそこを植え付けられている。その鈍感さが彼の良いところでもあるので、存分に鈍感にやっています。皆さんがツッコミながら見ていただけたらいいなと思います。
――――田沼意次を演じている渡辺謙さんから何か学ばれたものはありますか?
横浜さん:この作品の前に映画「国宝」という作品で、謙さんが父親役でご一緒しました。当時、自分は27歳だったのですが、謙さんもちょうど同じ年頃に大河の主演をされたそうで、「まっすぐ全力でやればいい」と力強い言葉をいただきました。その言葉を信じて、今、生きてます。現場でも謙さんの、佇まいやお芝居を見て、学ぶことが多く、その時間を大切にしてます。
――――“蔦重”を演じるにあたって、監督からなにか注文がありましたか?
横浜さん:監督からは、基本“明るく”と言われます。自分は朝が弱く、午前中の撮影でこれぐらいだろうと思って演じていても「ちょっと暗いな」と言われる。そこが一番の課題です。なんとか、朝が強くなり、明るくできればいいなと思ってるんですけど(笑)。
――――最後に、今回の大河の魅力を教えてください。
横浜さん:いい意味で、全てが大河ドラマらしくないです。派手な戦がない時代だからこそ、商いの戦が描かれていて、ビジネスストーリーや喜劇のよう。展開もすごいスピーディーでエンタメ要素も多いです。今まで自分の中では、大河ドラマは、“硬い”イメージがあったんです。今回はそれが一切ありません。だからこそ、ふだん見てない方や自分と同じ世代の方々にも見てほしいです。
〈インタビューを終えて〉
役作りの話から社会問題まで、さまざまな質問に、言葉をていねいに選んで、じっくり考えて答えてくれた横浜さん。その真摯な姿勢に、情に厚く、何事にも挑み続けた蔦重の姿が重なりました。いい意味で「大河らしくない」という作品作りも楽しみですね。
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』
NHK総合
毎週日曜 午後8時00分
NHK BS
毎週日曜 午後6時00分
公式HP https://nhk.jp/berabou
公式X アカウント https://x.com/berabou_nhk
公式Instagram アカウント https://www.instagram.com/berabou_nhk/
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」 1月放送分あらすじ
■第1回 「ありがた山の寒がらす」
明和の⼤⽕から1年半、蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)は、茶屋で働く傍ら貸本業を営んでいた。ある日、幼なじみの花魁・花の井(小芝風花)から、朝顔(愛希れいか)に届けものを託される。しかし蔦重が、浄念河岸の二文字屋を訪れると、ひどく衰弱した朝顔の姿があった…。吉原の場末である河岸見世の女郎たちの酷い惨状をみて、思い悩む蔦重。そんな中、吉原で付け火の事件が起き、騒然となる…。
■第2回 「吉原細見『嗚呼御江戸』」
蔦重(横浜流星)は吉原の案内本“吉原細見”で、吉原に再び人を呼び寄せる案を思いつく。細見の序文を江戸の有名人、平賀源内(安田顕)に執筆してもらうため、地本問屋・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)に相談にいく。自ら説得できれば、掲載を約束すると言われ、源内探しに奔走するが…。一方、江戸城内では一橋治済(生田斗真)の嫡男・豊千代の誕生を祝う盛大な宴が行われ、御三卿の面々や田沼意次(渡辺謙)らが集まっていた…。
■第3回 「千客万来『一目千本』」
蔦重(横浜流星)は吉原細見の改を行った後も、女郎たちから資金を集め、新たな本作りに駆け回る。駿河屋(高橋克実)は、そんな蔦重が許せず激怒し、家から追い出してしまう。それでも本作りをあきらめない蔦重は、絵師・北尾重政(橋本淳)を訪ねる。その頃、江戸城内では、田沼意次(渡辺謙)が一度白紙となった白河松平家への養子に、再び田安賢丸(寺田心)を送り込もうと、将軍・家治(眞島秀和)に相談を持ち掛ける…。
■第4回 「『雛形若菜』の甘い罠」
『一目千本』で成功した蔦重(横浜流星)は、次なる一手に、呉服屋の入金で店の着物を着た女郎の錦絵を作る計画を立てるも、自身の知名度の低さで資金集めに苦戦する。そんな中、西村屋(西村まさ彦)が共同制作の話を持ち掛け、錦絵作りは順調と思われたが…。一方、田安治察(入江甚儀)亡き後、賢丸(寺田心)は、田沼意次(渡辺謙)が画策した白河藩への養子の一件を撤回するため松平武元(石坂浩二)にある頼みを命じるが…。