これからの民藝 ワンタッチ帯加工 2[PR|きものやまと×着つけ]

ご覧ください、ほれぼれ美しいお太鼓の後ろ姿。
実はこれ、ワン・ツー・スリーで結べるワンタッチ帯加工で手に入れたものなんです。
興味津々で「きものやまと」のショールームを訪れたのは、着物を愛するコピーライターの坂本和加さんと、
着物はじめに向けて屈伸運動中のイラストレーターのなかむらるみさん。はてさて、その顛末は?

ワンタッチ帯を大解剖

聞けば発売以来ずっと大人気の帯加工とのこと。もともとは帯仕立て専門の和裁屋さんのアイデアだという。手結びでは難しい短い帯をキレイにラクに締めるため、試行錯誤を重ねて生まれた原型は個人的な便利帯、だったそう。その後、「やまと」オーダー部のリクエストによりこうして世に出ることとなったそうだ。はじめはオーダーするお客様側もおそるおそる。新品の、きれいな帯など加工用に届くはずもなく、ヨレやクセで仕上げるのにもひと苦労。その後も、使いつづけると出てきてしまう緩みなどにも丁寧に対応し改良を重ね、現在のかたち(お太鼓裏のメッシュ、大中小から選ぶ帯枕)となった。

採寸は服の上から。大きなベルトのようなメジャーに、斜めの指掛けがついている。測りやすさのための器具への小さな秘密兵器のメジャーを用い、店舗で対面採寸。柄の位置も相談できる。オンラインオーダーの場合は、身長や腰骨まわりのサイズを基に加工する。
2022年にスタートしたパーソナルフィットオーダー。あらかじめ半衿が付けられ、おはしょりも取られているため、ボタンを留めるだけで着られる。着つけが苦手な人はもちろん、体の不自由な人にもバリアフリーで着物を楽しんでもらいたいという思いから生まれた。「着物もお願いしちゃおうかな」となかむらさん。
加工された帯は特製の美しい箱に収められる。そのまま収納可能で、「横にして積んでおくとかたちも崩れず取り出しやすいです」と延山さん。

着られる人も着られない人も。着物との距離が近くなるかも

私たちの民藝。話を聞きながらふと、そんなコピーが浮かんだ。ある日、誰かの手のひらで生まれた工夫に、「だったらもっとこうして……」と他の誰かのアイデアが加えられて、もっと便利で快適なものになっていく。民藝運動の父、柳宗悦の唱えた「名もなき職人の手仕事から生まれた生活道具は美しい」という言葉どおりのことが、私の目の前で連綿と続いているようだった。帯結びをがんばらない、という選択は忙しい私たちに合っているし、手結びじゃなきゃいけない理由もないのだから。

いにしえの先人たちも、きっと「いいね」をくれる帯にちがいない。

坂本さんの着物/正絹色無地「結」濃青緑14万3000円(仕立て代込み)、正絹帯揚げ 金彩ちらし 薄黄 1万6500円、天然石帯留めイエローカルサイト1万1000円、三分紐8800円/以上、きものやまと なかむらさんの着物/久留米絣(くるめがすり)7万7000円(仕立て代込み)/きものやまと ※帯はいずれも私物。
【第1回】これからの民藝 ワンタッチ帯加工 1 を読む


文=坂本和加 クリエイティブディレクター・ブランディングコピーライター。合同会社コトリ社代表。「カラダにピース」「行くぜ、東北」などブランドの顔となるコピーを手がける。自分キャッチコピーの講師として、企業や教育の現場でワークショップも開催。著書に『ひとこと化』(ダイヤモンド社)など。www.cotori-sha.com

イラスト=なかむらるみ 本誌連載「田中敦子の染め織りペディア」のイラストでもおなじみのイラストレーター。著書に『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)など。譲られた手持ちの着物に合う名古屋帯を、2024年初めにゲット。ワンタッチ帯加工でついに着物との急接近がかなうのか?

撮影=小禄慎一郎