おおらかな島の自然を宿す草木染めの糸を使い、手織りで優しい風合いに織り上げるミンサー帯。
ゆかたにも、木綿や紬(つむぎ)の着物にも合わせたくなるこの愛(いと)おしい帯は、
どうやって私たちの手元に届いているのでしょう?
ミンサー織は生活のもの
暑い島でも涼やか。そんな和のいでたちで石垣島に到着した「きものやまと」一行。旅の目的は、八重山ミンサー織のつくり手を訪ねること。産地の様子を若い社員に実際に見てもらい、かつ、写真や動画に記録するためだ。
が! 旅のはじまりは、不慮の航空機トラブル。3時間の飛行予定は、羽田→鹿児島空港緊急着陸(えええ~)→羽田に逆戻り(ギャー)再び新石垣空港(行く!と決断)という長旅に。空の上で11時間を過ごした社長の矢嶋孝行さんは「無事に着いて良かった~。早く着けば、早く仕事に取りかかれますもんね」と笑顔。無事でも早くでもなかったのに、この時点ですでに、社長のパワフルなキャラは全開。
それに輪をかける元気な笑顔で出迎え、再会を喜ぶのは、松竹喜生子さん。松竹さんは、石垣島・白保の「染織工房なわた」でミンサー帯を手がける生産者グループのリーダーだ。
美しい海に囲まれた石垣島で手織りされる、八重山ミンサー織の帯。生命力あふれる樹木を用いた草木染めの木綿糸から生まれる帯は、島の自然を映し込んだかのよう。丁寧なものづくりから生まれた帯ながら、手に取りやすい価格なのもうれしい。やまとミンサー四寸(半幅)帯各4万9500円(税込み)。産地のものづくりや土地の空気を伝える「やまと」の“さんちプロジェクト”メンバーは、社長の矢嶋孝行さん、動画カメラマンの松木 翔さん、広報担当の楢村玲子さん、商品企画課の米徳一花さん。機動力抜群の少数精鋭だ。
「産地は元気なんだ!」確信に至る、島での出会い
2人の出会いは、さかのぼること20年。矢嶋さんが、20代前半の頃のことだ。「やまと」創業家の後継者という立場ではあるものの、当時は消防士の職に。「孝行社長のお父さんも、ものづくりをちゃんとわかった上で、私たちに仕事を任せてくれていましたからね。その後継ぎさんとして、せっかく、できることがあるのに、なぜ、しないの!という想(おも)いを孝行さんには話しましたね」と松竹さん。
その言葉は響いたものの、矢嶋さんは消防士の仕事を続け、30歳のときに「やまと」に入社。この先、自分は大勢の社員の人生を背負っていくことができるのか。そんな弱音も出た矢嶋さんに「私たちが売れるものをつくるから、なんとでもするから大丈夫! みんなが食べていけるようにするんです!」と力強い言葉で活を入れたのが、仕事で再会した松竹さんだった。
現在の2人は、ミンサー織という島の宝をともにつくり、守り、未来につなげていこうとするパートナーだ。矢嶋さんが「産地はこんなに元気なんだ!」と確信するに至る、出会いの場のひとつが石垣島・白保だった。
福木の防風林に守られるように建つ工房の庭で談笑する松竹喜生子さん(左)と浦崎しな子さん(右)。中学校の先輩・後輩だった2人は、その後、指導者と教え子の関係になり、現在は染めと織りの技術を継承していく仲間に。「染織工房なわた」から歩いてすぐの距離に白保の海が広がっている。
【第2回】これからの民藝 八重山ミンサー織 2 を読む
【第3回】これからの民藝 八重山ミンサー織 3 を読む
三つの島のものづくり
今回取材した石垣島のほか、竹富島や西表島にも個性豊かなつくり手がいます。
「きものやまと」では、2024年5月~6月をミンサー帯月間として、特設サイトでスペシャルムービーを掲載中。
天然染料を使用した「きものやまと」のミンサー帯は一期一会。
全国の「きものやまと」では多彩なミンサー帯をお取り扱いしており、オンラインストアでは100本のミンサー帯をご覧いただけます。
ミンサー帯について詳しくはこちら↓
「きものやまと」お客様サポートセンター
☎0120-18-8880
https://www.kimono-yamato.co.jp/
文=藤田千恵子 撮影=松木 翔 イラスト=カヤヒロヤ