「籐細工」の脚付かご (山形県・山形市)
椅子、銭湯かご、布団叩たたき、ピクニックバスケット、夏の枕……。籐とう細工は幼少の記憶の端
にいつもあり、思い浮かべると少しノスタルジックな気持ちになる。これは昭和生まれならではだろうか。とある場でこの脚付かごを見つけた時も、気付けば吸い寄せられるように素材に触れていた。
でも、昔とちょっと違う。なんだろう。
まず、優しく無垢な質感はラッカーをかけていないから。サイズも高さ60㎝と、とてもコンパクト。たとえばダイニングテーブルの下にもすっかり収まる。かごの底、フレーム部分はあえて編まずに差し込むことで、すっきりとした作りになっている。これなら埃も溜まりにくいだろう。機能とデザインが今の暮らしの気分をしっかり捉えて、まるでシェーカー家具のような洗練された佇まいが生まれている。
素材の歴史を辿れば平安時代まで遡る。遣唐使が中国から持ち帰ったとされる籐は、しなりが良く丈夫、湿気にも強く腐りにくい。輸入材にも拘わらず日本で籐の道具が長きにわたって作られてきた理由は、素材の特性が風土の理にかなっていたからに他ならない。
さて、かごに何を入れようか。バスタオルはもちろん、ベッドサイドに置いてショールや読みかけの本を入れたり、メイク用品を収めてもいいかもしれない。使い道を考えるこの時間がなんとも愉しくて、ただそこにあるだけで愛着が湧いてくる。
文、セレクト=つるやももこ 撮影=尾嶝 太
つるや・ももこ 旅と人をテーマに執筆。ウェブマガジン『Hō'ailona(ホーアイロナ)』を運営。2020年3月に、からだとこころの旅をテーマに、自著を刊行予定。ウェブサイトhttps://hoailona.com、インスタグラム@ho.ailona