新 手仕事ニッポン5

「熊野筆」のボディブラシ (広島県・安芸郡熊野町)

 

そばにあるだけでうきうきと高揚する道具というのがある。〝愛嬌(あいきょう)があるといったらよいだろうか。家のものでえば、桜のアイスクリームスプーンや、南部鉄器栓抜。自然素材れたままだとかびたり錆(さび)たり。手入れの手間はあるがその労力いても手元道具宝物となる。熊野筆のボディブラシもしかり

 肌てて完全ちるブラシの素材やわらかさとコシをえた山羊(やぎ)の胸元、化粧筆のために開発されたくなめらかな人工毛ぜている。手てくるくるとかすと、細かな毛先毛穴ひとつひとつに風呂場だけでなくいっそパソコンのいてずっとっていたいそんなおしさをじる

 肌触りの秀逸さは、素材さだけではなく、職人手作業によるところがきい。毛束えたら、小刀逆毛やすれ、整えるのは熟練勘頼。筆山のカーブのちょっとしたいで肌触りがわるから、品質えるには、修練うのだ

 江戸末期、奈良有馬出稼ぎにった熊野農民、書道筆仕入れて、自らもつくりはじめたのが熊野筆のはじまり。書家画家さばきや字体わせてぜたり毛筋えたり。芸術えてきた職人熱心試行錯誤がいま、化粧筆やボディブラシにもきているブラシをつめ。美一日にしてならず。道具じることのないようせっせと自分かねば

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熊野筆のボディブラシ 

広島県安芸郡熊野町で、江戸時代にはじまったとされる伝統工芸熊野筆180年余り受け継ぐ技術で、書道の毛筆や画筆をつくる。化粧筆の開発は約50年前。伝統の筆づくりを守りながら、生活の変化に沿った筆やブラシを、各メーカーが開発している。洗顔ブラシやリンパドレナージュ用も揃うラインSUVÉ(スーヴェ)のボディブラシは800円~。製造・販売元瑞穂http://suve.jp/

 

文、セレクト=つるやももこ 撮影=尾嶝 太

 

 

つるや・ももこ 地域の暮らしや道具、料理について取材執筆を行なう。編集を担う京都・伏見とその周辺の暮らしを伝える冊子百(もも)月に創刊。北九州市情報誌雲のうえ23号は10月発行