~番外編~ お訪ねした人 三世 桐竹勘十郎さん
料理家のスヌ子さん、今回はびゅーんとひとっ飛び、大阪へ。そこには刺繍が贅沢にほどこされた絢爛豪華な赤い着物をまとったお姫さまが。
人間以上に表情豊かに人形を操る「文楽」人形遣いの第一人者、桐竹勘十郎さんをお訪ねしました。勘十郎さんがお姫さまを手にした途端、お姫さまはオホホと笑い、よよよと泣き崩れました。百聞は一見にしかず。文楽人形って、本当に表情豊かなんです。
今回は芸術の秋、ということで、勘十郎さんから文楽人形の衣裳のお話や、生き生きと動かすヒミツ、文楽の楽しみ方を伺う「スヌ子のキモノ交差点」番外編です。
スヌ子 まずはお人形の着物について教えてください。これは人形用に特別につくっているのですか。
勘十郎 はい。人形用に柄を小さく染めたり刺繍したものを衣裳係の人たちが仕立てます。それを私たち人形遣いが胴に着せて人形をこしらえます。
スヌ子 人形遣いさんが衣裳を着せるんですか。どの人形に何を着せるかは決まっているのですか。
勘十郎 古典ものは昔から決まっています。赤い着物を着た〝赤姫〞は典型的なお姫さんですが、着物の柄は役によって違います。帯は着物の赤によく映える白地と黒地の2種類。
文楽の衣裳室に潜入~
公演が決まったら人形の全衣裳を準備するのが衣裳係。国立文楽劇場の3階にある衣裳室には、過去や未来の公演の衣裳が、宝の山のように積み上げられていた。
さんせい きりたけ・かんじゅうろう 昭和28年大阪府大阪市生まれ。父は人間国宝の人形遣い、二世桐竹勘十郎。昭和42年に文楽協会人形部研究生となり、三世吉田簑助に入門、吉田簑太郎を名乗る。足遣い、左遣いの修業を積み、女方、立役のいずれもこなす貴重な存在に。2003(平成15)年に三世桐竹勘十郎を襲名。演出・振り付け・指導だけでなく、新作浄瑠璃(じょうるり)や人形づくりにもたずさわるなど、幅広く活躍。
すぬこ 青山学院大学卒業。出版社勤務を経て、東京・日本橋に「ギャラリーキッチンKIWI」を開設。料理教室を主宰する一方、手軽で華のあるレシピを、雑誌やウェブ、広告などで公開している。CSファミリー劇場「スヌ子のぶらり酔いどれ飯」に出演中。近著は『夜ふけのおつまみ』(角川新書)。