sponsored by 倉橋宿泊事業者協議会
万葉集で詠われた島
今春、広島県の倉橋町を舞台に「島のお宝 食育キッチンin倉橋島ツアー」が始まる。
倉橋島の倉橋町は、広島県の最南端。山口県や愛媛県を臨む、瀬戸内海の真ん中に位置する風光明媚なところ。今回の拠点の一つである桂浜は、かつては日本の渚百選、近年では「水がきれいな海水浴場ランキング」で全国586カ所中29位という美しさ。万葉集で詠われ、平安時代から海上交通の要所であり、造船で栄えた歴史ある島でもある。
現在は、豊かな自然を生かした、各種農産物、牡蠣(かき)の養殖、ちりめんなどの漁業が盛ん。
今回のプロジェクト推進リーダーである天本雅也さん(シーサイド桂ヶ浜荘主人)は、
「子供たちに野菜がどのように作られているのか、魚介が獲られているのか。それがどう料理されて口に入るのかまでを、見て感じてほしい」と語る。
2月に、子供たちと一緒に農家さんや漁師さんを訪ねる機会があったので、その一部をレポートしよう。
漁船に乗せてもらって「たこつぼ漁」を見学!
「初めてたこに触りました。ぬるぬるしてて気持ちよかった」と小学4年生の奈穂ちゃん。
「ちょっとかたかったけどおいしかった」と、小学3年生の礼次朗くん。
「つるや荘」という民宿も営む漁師の小平満さんの船にのせてもらって、たこつぼ漁を見学。ロープに60個ほどのつぼをつけて海底に沈めておき、たこが魚からの隠れ家と勘違いしてつぼに入り込んだものを引き上げるという伝統の漁法だ。
引き上げる際にたこが逃げそうなものだが、たこは何かにしがみつく習性があるから大丈夫。逆に船上に引き上げられても簡単につぼから出てこない。すると漁師さんがたこに塩をひと振り。たこがあわててつぼから出てくるから面白い。
にょろにょろにょろっと這い出してきたたこに子供たちは大歓声! 最初はおっかなびっくり手を出すが、漁師さんの「こわくないよ」のひと言に、しっかりたこを持たせてもらって記念撮影。
岸に戻ったら、漁師さんの娘さんが船上ですぐにさばいてくれて試食タイム。親は大喜びだが子供たちはどうか? たこは暴れるわけでもなく、血も出ないから見ていて怖くない。皮をむいた真っ白な身を、おそるおそるひと口。子供にはややかたいけど、やさしい食感と甘みは好評。大人はといえば、なめらかな舌ざわりとうまみにビールがほしくなる。そこは夕方まで我慢して、たこを箱詰めしていただいて、次の生産者さんのところに移動する。
倉橋特産「お宝とまと」を収穫体験!
「トマトは好き?」と聞くと「大好き!」と奈穂ちゃん。でも、トマトのハウスの前に着いてトマトが鈴なりになっているのを見て歓声を上げたのはお母さま方。小躍りするかのようにハウスに入ると、暑い。
「昼は28℃、夜は12℃にコントロールしています。倉島の寒暖差のある気候をうまく利用すると、甘みが豊かで適度な酸味もあるおいしいトマトができるんです」と、トマト農家の水場大輔さん。「お宝とまと」のブランドで、日常に食べられる中で一番おいしいトマトをめざして出荷しているという。
「トマトは、(つるの)下のほうから赤くなるんだ」と子供たち。
「畑のトマトは、ピッカピカでつるんつるん。こんな肌になりたい」とお母さん。
クロマルハナバチという日本のミツバチをハウスに放して受粉させるなど、安全性を考慮して農薬もほとんど使っていないというので、その場でトマトの丸かじりを。
「ずっしり重くて、水気たっぷり」「甘くておいしい!」。ここだけは親子共通の感想。適度な酸味もあるから、料理に使ってもおいしいことも教わった。
たこやトマトを使って、親子でパエリアづくり
「野菜を切るのって、たいへんだけど楽しかった」と、小学2年生の一誠くん。
場所を「須ノ浦ストーンフィールド」に移し、海辺のデッキで料理体験の始まりだ。
メインメニューはパエリア。収穫したトマト、たこのほかに、倉橋島の特産物である牡蠣(かき)を生かせるスペインのご飯料理だ。
ざくざくざくとトマトを切りたいところだが、なかなかそうはいかない。
「包丁を持たない手は、猫のように指をまるくしてトマトを支えて。包丁は下に押すのではなく自分のほうに引くようにすると切れるのよ」と、ふだん食育のお手伝いをしている先生方が教えてくれる。
パエリア鍋を使ってトマトを炒めたらいったん取り出し、パエリア鍋に米を入れて少し炒め、トマト、牡蠣、エビと水などを加えて火を入れていく。お母さんとツアーガイド役のジョーダンさんがスープやサラダをつくって完成だ。
みんなで食卓に集まって「いただきます!」。きちんとした感謝の挨拶も大切な食育の一貫である。
海釣りやサイクリングもできる!
体験メニューは、ほかにも、サビキという疑似餌針(ぎじえばり)を使った海釣りもあり、今回はメバルがよく釣れた。電動のe—バイクもあるから、アップダウンのある島内でもサイクリングが楽しめる。
撮影・宮前祥子 文・牧原耕一