【ウェブ特別記事】見守って! 中学受験生の心のケア その2

後ろから黙って抱きしめてあげて

中学受験の個別指導に定評がある「SS-1」代表の小川大介氏は、受験生に対して、たとえ無意識であっても、親がとってはいけない3つの言動があると語る。

「『頑張れ』と『なぜ』、子供の前での『溜息』この三つは絶対NGです。子供にとって親からの『頑張れ』は、『今のままじゃダメだ』といわれているようにしか聞こえません。また、『なぜ』も、その後に『勉強しないの?』などの否定的な言葉しか続かないので避けるべきですね。子供がテストで悪い点数をとっても、本人の前で溜息をつくのはやめましょう。いずれも子供を精神的に追い詰めてしまいます」

親は子供の志望校合格を願えばこそ、無意識にそんな言動をとってしまうのだろうが、悪気がない分、子供は一層傷つくのだという。その結果、子供を傷つけるだけでなく、勉強へのやる気も削がれてしまう。

また、実力以上の目標を子供に押し付けることも、子供を追いつめてしまいやすいと小川氏は注意をうながす。

「成績が伴わないのに、親が第一志望に固執すると、子供は目標に届かない現実を日々突きつけられることになる。これでは毎日の勉強で無力感しか感じられないでしょう。かといって、目標を下げ過ぎたり、投げやりな態度をとると、子供のプライドが傷つきます。子供の資質や能力に合わせて、本人が納得する学校を親が探したうえで、本人が志望校の変更を受け入れられるようていねいに働きかけることです。それが本人のためであり、親のためにもなります」

受験ストレスで子供を追いつめてしまう前に、親が子供の異変をできるだけ早く察知することも大切だ。それには子供の普段の生活態度が基準になる、と小川氏は話す。

「普段は大人しい子が、ある時を境にやたらとおしゃべりになったり、『ダルい』といったネガティブな言葉を頻繁につぶやいたり、急に子供っぽい言動を見せたりしたら要注意。そういう場合は、子供を後ろから黙って抱きしめてあげたり、肩を抱いてあげたり手を握ってあげるなど、子供の不安をやさしく包み込んであげてみてください」

わが子の中学受験には、どの家庭も何年もの時間をかけている。かけてきた費用だって安くはない。10月ともなれば、いよいよ最後の追い込みの時期。当然、どの家庭も焦りが募る。

しかし、初心に立ち返ってみれば、中学受験は子供の将来のために始めたのではないだろうか。「わが子を思うあまり」の気持ちの焦りが、かえって子供の心を傷つけ、成績も下がってしまっては本末転倒である。

大事なわが子だからこそ、最後は一度、中学受験を始めた頃の初心に立ち返って、おおらかな気持ちで見守ってやってほしい。

荒川 龍=文