中高生アプリ開発コンテストの頂点に立った開成生

IT界の登竜門!「アプリ甲子園」の優勝者決定!                                                                                   ついつい夢中になるゲームから、社会問題解決まで、若者の知恵が大集合

決勝大会参加者のみなさん
優勝者の大渕雄生くん(開成高校2年)
大渕くんが左手に持っているのが、靴に埋め込むGPSと徘徊を知らせるライト。アプリだけでなく、基盤の接続やアプリとの連動も自ら考案した。

ここ数年、習い事として人気を集めているプログラミング。

スマートフォンやタブレット端末に幼少期から触れ、親しんでいる世代を“デジタルネイティブ”というが、こうした電子機器を使いこなすだけでなく、新しいソフトを作り出す子供たちが現れています。

10月23日 東京都中央区銀座で、プログラミングを得意とする中高生たちが自ら作ったアプリをプレゼンテーションをする “アプリ甲子園決勝大会”が開催されました。

アプリ甲子園は今年で開催6回目を数え、決勝大会出場者のOB・OGの中には大学生ながらIT企業を立ち上げる学生がいるなど、アプリ開発者の登竜門的な大会です。

この日は1000名を超える参加者の中から、決勝に残った10組11名(2人1チームが1組)が自らのアプリの機能、特性、デザインなどについて、各5分ずつプレゼンテーションを行いました。

審査員の大学教授や企業の取締役を前に「こんな経験で困ったことはありませんか」、「実は今の中高生はこんなことに困っているんです」とアプリを開発したきっかけを語り、自らのアプリのアピールポイントを説明する姿に会場中の大人たちの目は釘付け。審査員からの技術的な質問にも、堂々と答えていました。

アプリは独創性、デザイン性、消費者支持度といった企画力と、操作性、技術点、完成度といった技術力の両面から採点。

今回、決勝に残ったのは、“機種によるズレをなくした音楽ゲーム”、“画像と音楽、音声などを組み合わせ、自分好みのVR世界を作れるアプリ”、“友達との待ち合わせに遅れた際に言い訳を考えてくれるアプリ”など。

どのアプリも「自分のスマートフォンにダウンロードしたい!」と思えるプロ顔負けのものばかりでしたが、群を抜いて注目を集めていたのが、優勝を獲得した開成高校2年大渕雄生君の“Find Family”というアプリでした。

このアプリは靴の中に入れたGPSの位置情報を、手元のスマートフォンで確認するというもの。認知症のお年寄りがどこにいるのか、現在靴を履いているのか、靴を最後に履いたのはいつかが分かるという仕組みになっています。

大渕くん「開発のきっかけは、祖母が認知症の曽祖父の介護で非常に苦労していたことでした。90歳から認知症を患い、突然外出して姿が見えなくなってしまうこともありました。認知症だと身の回りのことがどんどん自分で出来なくなっていきます。しかし、靴を履き忘れることはありませんでした。そこで、靴にGPSを埋め込むことを思いついたんです」

ニュースなどで認知症の患者が電車事故に巻き込まれ死亡した事件なども、開発を後押ししたそう。

また、徘徊してしまった際に、アプリを操作して靴を光らせる機能もついている。

「僕の家の近所で“茶色のズボン、白髪で身長170cmくらいの認知症のおじいさんが徘徊しています。見かけた方は、声をかけてください”という放送が流れたことがありました。僕が散歩中におそらくそうじゃないかなというお年寄りを見かけたのですが、認知症でない散歩中の人に間違って声をかけてしまったら、大変失礼だなと思って、声をかけられませんでした。お年寄りの身体的な特徴で人探しをするのは、難しいので、靴を光らせることにしたのです。“靴が光っている人”と探してもらえば、ずっと見つけ易くなりますから」

大渕くんがアプリ開発をはじめたのは高校1年の夏から。そして、このアプリの開発には7月下旬から取り掛かった。夏休みには1日12時間ほどアプリ開発に費やしたという。

「提出前日に靴に入れる基盤を保護するカバーが間に合わなくて、自分で木を削って作りました」

と開発にかかった苦労を笑顔で語ってくれました。将来はAIの研究の道に進みたいと語る大渕くん。このアプリについては、商業化も見据えており、すでに協力企業も名乗りを上げているそうです。

大会を振り返り、審査員の慶應義塾大学中澤仁准教授は「技術力の高さだけでなく、技術やアイデアの幅を感じさせる大会になった」と評価していました。

出場者たちの魅力的なアプリとプレゼンテーションは、アプリ甲子園の公式HPから見ることができます。

大人顔負けの製作物と堂々とした話しぶりに、子供の可能性の広がりを感じられるかもしれません。