【有名中高一貫校OB・OGインタビュー】筑波大附属駒場編
「中高一貫校に入学後の学校の様子が知りたい」という読者の声に答えて、有名中高一貫校の卒業生に中高の話を聞くコーナーを作りました。第4回は中学受験では最難関の中高一貫校の筑波大附属駒場(以下、筑駒)。毎年半数の卒業生が東京大学に進学する筑駒の学校の雰囲気とはどんな感じなのか。2013年3月卒業生で、現在、東大文科1類に在学中のD君に話を聞きました。
――日本一難しい学校なので頭の回転が速い子ばかりだと思うのですが、同級生はどんな子が多かった?
「一芸を持っている人が多かった印象です。普段は冗談を言っている友人が、実は国際生物オリンピックに出ていて最高賞を受賞していたとか。
筑駒は人数が少ないんですよ。中学で120人入学して、高校で40人入学してくるので、卒業時は1学年160人です。開成は400人以上いるので、それに比べれば小規模。だから知らない人はいないし、仲はよくなります。その割には学校の敷地が広いので、入学したとき、この学校広い! と思いました」
――校風はどんな感じですか? 入学後に意外な点はありましたか?
「入学するまで知らなかったことと言えば、理系科目の指導に力を入れていることでした。理科と数学の授業は特殊で高度なんです。スーパーサイエンスハイスクール(*)に指定されているからかもしれませんが、先生が興味のある内容を授業にしているという感じ。例えば、数学では普通は高校で習う微分積分を中2でしたり、インターネットのセキュリティに使われるRSA暗号の解読をしたりしました。理科なら海外の文献を授業に使ったり。大学受験の勉強には直結していませんが、今振り返って思うと受験にも役立っているかもしれませんね…。僕は文系科目が得意で、理系科目は苦手なほうだったので、理科や数学の授業はついていくのに精一杯。クラスの中にはこういった内容を喜んで解く人もいたんですよ。そもそも理系科目が得意な生徒が入ってくるからか、授業が特徴的だからなのかわかりませんが、数学や化学、生物の国際オリンピック大会に出て、受賞する人も毎年何人かいました。
校則といえば“ガムを噛むのが禁止”というのだけ。制服は無く私服で登校です。校則がほとんどないということでは、男子校の麻布と同じなので、麻布には親近感を覚えていました。でも麻布の文化祭には女子校の生徒がたくさん来るらしく女子との交流が盛んなイメージがあり、筑駒は女子との交流はあまりないので、麻布のほうがチャラく筑駒は硬派だと思っていましたね(笑)。ちなみに、高校時代の塾や大学では筑駒と桜陰という組み合わせのカップルが比較的多かったです。校風が合うのでしょうか」
――筑駒らしい特徴的な行事はありますか?
「マラソンが盛んで、毎年ロードレースというマラソン大会があり、冬になると体育の授業は毎回持久走になります。学校側としては大学受験や将来のための体力づくりという意図があるのかわかりませんが、いっぱい走らされました。あとは中1のときには一日中登山する行事もありました。
ほかにも文化祭、体育祭、音楽祭という3大行事があって、生徒が予算管理から運営までします。高3の11月まで行事があって、それが終わるまで大学受験体制という感じではなくて……。同じような進学校でも高3の春くらいまでに行事が終わる学校が多いので、現役で大学合格を目指していると結構きつかったです。
あと印象的な行事としては修学旅行。修学旅行は、「地域研究」という名前で、3回あります。中2は「東京地域研究」、中3は「東北地域研究」、高2は「関西地域研究」で、生徒がグループに分かれて半年以上前からテーマを決めるなどの準備をして、最終的には報告書を作って製本します。各地域の企業や官庁、研究者などにもアポイントメントを取って話を聞いたりするので社会勉強にもなるし、自由度が高いけれどハードでした。今、考えれば筑駒の行事で一番印象的でした」
――国立中学だと学費は公立中学とほぼ同じなのが親としてはいいところだよね。でも塾に通う子は多いのかな?
「数学と理科の授業が特殊なので、大学受験に直結しているわけではないので、塾に行っている人は多かったです。中1の時点で、英語か算数で鉄緑会なりZ会の塾に3分の2くらいが入っていました。高3になると僕の知る限りではほぼ全員がどこかの塾には入っていました。たしかに塾代はかかっていたかもしれません」
――そもそも入学するのが難しいと思うのだけれど、筑駒にはどんな子に合いそうですか?
「難易度はすごく高いように思われますが、開成や麻布には受からなかったけれど、筑駒には受かったという友達もいました。それは、中学受験の試験時間が1教科40分と短かったり、小学校の内申(**)が考慮されたり、特殊な問題があったりするからだと思います。あまり合わない人はいない学校だと思いますが、やりたいことがある人にはすごくいい学校だと思います。宿題やテストも多くありません。自分が好きなことをやれる学校です。部活も作りたいと言えば、先生は応援してくれ作れます。一芸がある人が多いのも、中学に入って同級生とか先輩とか刺激されてどんどん専門分野に磨きをかけている人が多かったと思うんです。僕も小学生のときからテニスはしていましたが、中高時代にさらにテニスに打ち込みました。部活のテニスのほかスクールにも通って、全国大会に出場したこともあります。周りを見ても勉強以外のことで頑張っている同級生が多かったので、学校の勉強以外にも頑張りたいという気になれる学校です」
日本一難しい学校ながら、ガリ勉タイプではなく一芸に秀でた子が多いというのは意外でした。勉強はある程度して当たり前で、それ以外に打ち込めるものを見つけようという雰囲気があるということなのでしょう。高度な理数系の授業が受けられるということからも、理系科目が好きな子は特に向いているかもしれません。
* スーパーサイエンスハイスクールとは、文科省の指定により学習指導要領の枠にとらわれない先進的な理数教育を実施できる制度。全国約200校が指定されている。
** 筑駒の入試の合否に関わる書類で、小学校に記載してもらう。報告書と呼ばれている。
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