
色や文様を描くひとつ手前、白生地と呼ばれる真っ白な着物の反物は、
日本海に面した海の京都、丹後半島で生まれます。
着物研究家のシーラ・クリフさんとともに、京丹後を訪れた
さまざまな国から日本にやってきたひとびと。
2日目は、華やかな古典文様の着物に袖を通して過ごします。
自然や絹織物と、京丹後の人々のとくべつな関係が見えてきました。
シーラ・クリフ
着物研究家。イギリス生まれ、ほぼ365日着物生活。リーズ大学大学院博士課程修了。十文字学園女子大学名誉教授。著書に、『Sheila Kimono Style』(東海大学研究所)、『Sheila Kimono Style Plus』(東海大学研究所)ほか。ファッションとしての着物の豊かさ、楽しさを抜群のスタイリングセンスの着こなしで伝えている。
その1 KISSUIEN Stay&Food クラシカルな着物姿に変身
その2 蠶織(こおり)神社 おみくじが告げるもの
その3 八丁浜 丹後ブルーと着物が出会う
その4 (公財)丹後地域地場産業振興センター アミティ丹後(丹後ちりめん祭り) ファッションショーに拍手喝采
自分で選んだ着物を着つけていただく朝。
絹は触れた瞬間ひんやり感じるけれど
すぐに体温をまとってしっとり身体を包み込んでくれます。
昨日訪れた機織り工場で見た白い反物が、更に多くの職人の仕事を経てあでやかな着物になって、ふるさと丹後で袖を通す。
とても貴重な体験です。
十人十色、それぞれの雰囲気に合わせてコーディネートを組み立てます。
お気に入りの色とデザインでパッと選ぶ参加者も、
紋様に込められた意味を知ってじっくり選ぶ参加者も。
織物の神様と養蚕の神様を祀る蠶織(こおり)神社にて、宮司西川康一さんから機織りと地域にまつわるお話を聞きました。
大正14年の奉賽(ほうさい)からずっと、春に織物の振興と発展を祈願する神事が続けられています。
紅葉する樹々と色とりどりの着物が響き合い、とても美しい瞬間になりました。
一人ひとりに授けられた『ちりめんお御籤』には「目には見えない、耳には聞こえない神様からのメッセージが書かれています」と西川宮司。
お御籤袋は「丹後織物禊の会」という織元のグループが神社に奉納した丹後ちりめん製です。
冬の丹後の海で身を清め、福機を引き当てた織元が祈りを込めて織り上げます。
「今すぐ海に入りたい!」
思わず声を上げてしまう美しい丹後ブルーの海。
季節外れの晴天に恵まれ、夏のような色彩で私たちを出迎えてくれました。
こんな景色は誰も見たことがないでしょう。
ここは丹後半島。
都心からうんと遠く離れた、着物の生まれる場所です。
海を前に、思い思いのポーズで写真を撮る参加者たち。
海の美しさは丹後ちりめんが生まれた300年前から変わりません。
職人たちはこの圧倒的な自然に感性を磨かれ
宝石のような丹後ちりめんを織りなしてきました。
海、山、田畑が描く四季折々の風景は、訪れる人の心をふるわせる宝物です。
「とってもクールだった!」
「涙が出るほど感動しました」
この旅いちばんの大絶賛を得たのは『丹後ちりめん着物ファッションショー』です。
京正統派の着付けをしたモデルのウォーキング、寸劇を交えたコミカルな演目、アニメを思わせる世界観の行列など、着物の魅力をバラエティ豊かに表現していました。
「着物が好き」という出演者たちの情熱が、ツアー参加者の心を打ちます。
『丹後ちりめん祭り』は、蠶織神社の神事と対をなすお祭りとして、長らく地域を盛り上げきました。
会場ではお蚕さんの繭から糸を引き出す座繰りや手機の体験、中学生のブラスバンド演奏、ダンスパフォーマンスなど盛りだくさんの内容で楽しませてくれます。
その1
KISSUIEN Stay&Food
京都府京丹後市峰山町杉谷943
TEL 0772-62-5111
⚫︎着替えの舞台となった今旅の宿。2022年春にモダンなしつらいでリニューアルオープン。長寿の町・京丹後の食材を生かしたレストラン「aun」や、隣の建物には酵素風呂やサウナを併設する温浴施設「ぬかとゆげ」など体が健やかになる施設も。
https://kissuien.jp//
その2
蠶織(こおり)神社 (網野神社境内内)
京都府京丹後市網野町網野789
TEL 0772‐72‐0079
●大正14年(1925年)、織物と養蚕の神を奉祀して網野神社の境内に建立された。古くから伝わる神事を復刻する試みも行われている。
https://aminojinja.sakura.ne.jp/
その3
八丁浜
●京丹後市網野町浅茂川と網野町小浜にまたがる海岸。サーフィンのメッカとして、国内外から多くの愛好家が訪れる。浅茂川にある嶋児神社には浦島伝説があり、浦島子、日子坐王などが祀られている。
その4
(公財)丹後地域地場産業振興センター アミティ丹後(丹後ちりめん祭り)
京都府京丹後市網野町網野367
TEL 0772-72-5261
https://amitytango.jp/
●丹後の歴史ある産業の変遷の資料展示や、新技術・新製品の開発と研究、丹後全特産品の販売や情報発信を行うセンター。丹後ちりめんの製織見学、染色体験なども行なっている。「アミティ丹後」で開催される丹後ちりめん祭りは、“丹後ちりめん”をテーマにした年に一度のお祭り。地元の有志によるファッションショーや、キモノdeディスコ!(チケット制)などの催しも。詳細は京丹後ナビにて。
https://www.kyotango.gr.jp/
文・原田美帆(PARANOMAD)
テキスタイルデザイナー・メーカー。兵庫県川西市出身。彫刻を学んだのち、インテリアコーディネーター、彫刻家アシスタントを経て丹後に移住。2023年4月、ファクトリー「MADO」をオープン。テキスタイルを織ったり、文章を書いたり、ローカル団体の立ち上げをしたり、いろんなナリワイで生きてます。
PARANOMAD https://paranomad.net/
撮影・石川奈都子
写真家。呉服屋の孫として奈良に生まれる。西陣の長屋在住30年で、現在は大原と2拠点生活中。3・6・9・12月の8日は「環の市」「ベジサラ市」を主宰開催、年に一度禅寺選佛寺にて「うむ。」を共催。ウェブメディアHIRAKU-Cosmic Breathing-をローンチし、編集長、執筆、撮影をライフワークとして展開している。育児中で据え置き中だが気分転換に着物を着たい派。
HIRAKU https://kurashino.org/
石川奈都子写真事務所 ishikawanatsuko.jp