ハーバード生が感動した!東大生流「おもてなし」とは?

オールイングリッシュで交流。HCAP東京大学運営委員会の挑戦!

左から2番目がウォーリーに変装した筆者。
ハーバード生がビニール傘にぼくらへのメッセージを書いてくれたサプライズもあり感動!
遊びだけでなく、将来について、格差社会について……まじめな議論もしました
空港での見送りにて。絆ができた10日間の最後です

東京大学には世界のトップ大学と国際交流をするサークルがいくつか存在します。その1つ、米ハーバード大学の学生と交流をする「HCAP」という団体があります。今春、実際にハーバード大生を東京に招いたHCAPのメンバーで、東大生の下山くんが寄稿してくれました。

東京にやってきたハーバード生と濃密に、10日間をともに過ごす。濃密に、愉快に、絆がつむげるように――。私たちHCAP東京大学運営委員会(団体の説明は文末)は、その設計をする団体です。10日間で何を目指すのか。ひたむきに考え抜いた末、カンファレンスが終わった今、私たち東大生にとっても、おそらくハーバード生にとっても、かけがえのないものが生まれたと自負しています。

10日間のプログラムはacademic、cultural、socialの三要素を込めており、専門家と自然災害の復興を議論したり、東京の都市開発の現場を見に行ったり、海外大学に興味がある高校生を招きハーバード生と東大生と交流したり、Kawaiiファッションや築地市場を見に行くなど、多種多彩な企画を実行しました。この記事では、僕が主に携わった「東京オリエンテーリング」という企画についてお話しします。

 「ハーバード生ってどんな人たちだろう?」。僕が持っていたハーバード生のイメージは次のようなものでした。世界トップ級の大学に通い、将来は政治家や企業家として世界を動かす。国内ではエリートと呼ばれることもある私たちも気後れしてしまう彼らとどのように向き合えばいいのだろうか。そのような迷いの中、僕がデザインした一日のコンセプトは、「楽しむこと」。国籍もそれまでの歩みも価値観を越えて、ともに「TOKYO」を楽しむ。そこで日本への理解が育まれ、ハーバード生たちとの共感も生まれると考えたからです。

コンセプトは決まりました。ただ、ここからは試行錯誤の連続。お堅い企画では楽しめないし、独りよがりになってもならないし。ハーバード生と東大生の10番勝負、ひたすらギネス記録への挑戦、運動会の開催……などが思いつきました。それでも、ピンときません。ときにはメンバーにダメ出しをされることも。東大生は全員が1年生。対して来日するハーバード生は主に3年生、4年生です。「年上ばかりのハーバード生は楽しんでくれないんじゃないか」「日本人の楽しいと思うことが、外国人には楽しいとは思わないのではないか」。「わざわざ12時間のフライトを経てやってくるハーバード生は何をしたいんだろう」。立案してはボツにする日々が続きました。

活路を開いてくれたのは、僕たちが今まさに暮らす「東京」でした。「COOL JAPAN」の象徴であり、東洋の伝統と混沌が息づくメガロポリス。そんな魅力に触れてもらい、僕らもまたあらためて理解を深めたいと思ったのです。たどり着いたのは、東京の街が舞台のチーム対抗戦です。僕らだからこそ分かる素晴らしさを満喫してもらいながら、東京にのめり込むような一日を過ごしてもらいたい。その想いをカタチにした一日は、浅草の雷門から始まりました。

写真の中には、世界的に有名な絵本『ウォーリーをさがせ!』の主人公「ウォーリー」がいます。東大生がウォーリーに変装して、浅草の街のどこかに隠れる「ウォーリーをさがせ!」のゲームを実際に行うことにしました。そして残りの東大生とハーバード生が浅草の町並みを堪能しながら探し回るのです。途中で、「おみくじの大吉の写真を撮れ」「人力車を引いている人の写真も」などのお題も登場。浅草の今を切り取るミニゲームもつけ、ハーバード生に雨の中、浅草の街を走り回ってもらいました。午後は日本が誇る電脳空間、秋葉原へ。ハーバード生の注目度の高い街の一つです。メイドカフェで驚いたり、コスプレショップで困惑しながら笑いあったり。夜のパーティーでは、秋葉原で購入したコスプレファッションで盛り上がりました。僕は日本を代表するゲームキャラクター、ルイージに、もう一人のメンバーはマリオになりました。

僕らの考えたゲームや仕掛けで楽しむ中でも議論は生まれます。「日本にはお寺も神社もあるけど、仏教と神道の違いはどういうことなの?」「お寺と神社どちらでも大切そうに拝んでるけど、日本人は無宗教なの?」お賽銭を入れ、丁寧にお参りする日本人の姿を見たハーバード生のするどい質問に、思わず考え込む私たち。メイドカフェでは、日本の若者はなぜアニメやマンガにハマるのか、そこには若者の社会観が反映されているのではないかなどの問題提起も。ふとした気づきから議論が始まり、徹底的に話し込むのも国際交流の醍醐味であり、HCAPならではの体験と感じました。

伝統と革新、文化とサブカルチャーを満喫する一日は、ハーバード生にも日本の多面性や奥深さを感じさせる機会となりました。そして思いっきり笑うことで、お互いの距離が縮まり、そのあと将来や生き方、政治の在り方など深い話し合いができました。

ハーバード生にとってのかけがえのない1日とはなにか。ずっと考え続け、不安にも駆られたこともあった約10カ月。帰国するとき、ハーバード生の一人が僕にこんな言葉をくれました。「ディズニーランドよりも子供の時のどんな思い出よりも、楽しい時間だったよ」。僕たちが考えてきた「おもてなし」が、ハーバード生の心を揺さぶったことを知った瞬間、達成感に包まれました。これまでの19年間でも味わったことのないような感動でした。ハーバード生を成田空港まで送る際、普段ほとんど泣くことがない僕の目から涙がこぼれ落ちました。

(文/下山明彦 東京大学文科1類 広島県出身 現在、フィリピンとインドへ留学中)

【団体説明】

Harvard College in Asia Program、通称 HCAP( エイチキャップ ) は、ハーバード大学に本部を置く、ハーバード大学とアジア各国のトップ大学生との交流を目的とした学生によって運営される団体。単なる国際交流に留まらず、毎年2回開催されるカンファレンスでの学術企画や文化企画、交流企画を通して、深い相互理解を達成することを目指しています。HCAP のカンファレンスは、各国の支部の学生によるハーバード大学訪問と、ハーバード生の各国への訪問の二つに分けられており、日本では、HCAP東京大学運営委員会が2005年以来10年間にわたりハーバード本部とパートナーシップを結び、東京でのカンファレンスを開催しています。本年度の東京カンファレンスでも、個性豊かな東京大学の一年生14名が「人生に爪痕を残すようなカンファレンス」を作り上げることを目標とし、各人の力を結集させてカンファレンスを実施しました。
http://hcap.tokyo/